
1冊の本との出会いが、人生を変えた
| “こ~い、こい、こい、こい”と水田に呼びかけると、真ん中から“ぐわ、ぐわ”という鳴き声がこちらに近づいてくる。そして生い茂る稲の間から姿を現したのは、20羽ほどの合鴨たち。 ここは福岡県大牟田市の山間にある小宮宏氏の水田。小宮氏は、水田に合鴨を放すことで有機無農薬による稲作を行う『合鴨農法』を実践している農業生産者だ。 そもそも合鴨農法とは、合鴨が雑草や害虫を餌として食べることで虫の被害を抑え、くちばしで突っつき刺激することで稲の生育を良くし、また合鴨の排泄物が稲の養分となり、泳いで土をかき混ぜ水を濁らせることで雑草を生えにくくする農法だ。 小宮氏は、ある1冊の本との出会いから、こうした合鴨農法を知り、農業生産者への転身を決意したという。 |
![]() 水田で合鴨と一緒に。ネットには、外的防御のため微弱 な電流が流れている |
持ち前の行動力で、憧れの古野農場の研修生に
![]() 「合鴨農法は稲作と畜産を同時にやっているようなもの」 と小宮氏 |
そもそも小宮氏は、佐賀大学経済学部を卒業後、愛国心から陸上自衛隊に入隊したというプロフィール。自衛隊での6年間は、パラシュート部隊に所属するなど本人曰く“大変良い経験をさせてもらった”という。そんな自衛隊時代に、『スローフードな日本!』(島村菜津著・新潮社)という本を手にする。本の中では農業に携わる10人が紹介されていたのだが、合鴨を使った無農薬による米の栽培を行う古野隆雄氏の記事が頭から離れなかった。 そこで小宮氏は持ち前の行動力で、古野農場についてインターネットで調べ、研修生を募集していることを知り、すぐさま電話で応募し見事研修生となる。 |
大牟田市の山間に水田9反、畑4反の農業生産者
| 古野農場での研修期間は1年。朝7時30分から夜の6時まで実習を行い、その技術を体に染みこませていくのだが、小宮氏が研修を通じて特に感動したのは、古野氏の農業への取り組み姿勢だったという。通常なら指導だけで研修生に作業をさせるところ、古野氏自ら情熱を持って奥様と一緒にもくもくと農作業を行うのだ。 こうした充実の研究期間を経て、自衛隊の時に貯めた貯金80万円を使い、大牟田市の山間部に水田9反、畑4反の農業生産者となる。現在は、合鴨農法でヒノヒカリ米、そして有機無農薬をモットーに60種類の野菜を栽培。できあがったお米や野菜は、大牟田市内の個人宅に配達したり、自衛隊の仲間に通信販売を行っているという。 |
![]() 貯金80万円、そして水田9反、畑4反そして住居を地元の方 から借りて、小宮氏の農業はスタートした |
やっぱり自分で作った米だから美味しい!
![]() 初めての年は合鴨を放す時期が遅れたり、雑草を生やす などの失敗もあったが、良い教訓になったという |
気になる合鴨米の味について訪ねると、「山間部のため水は良いですし、寒暖の差が激しいので、美味しいお米が作れます。でも何よりも、やっぱり自分で作った米だから美味しいですよ」と顔をほころばせる。 農業に転身して良かったかたずねると、「1人でやっているので管理が大変です。あと孤独ですね。以前は上司や同期・部下もいたし、協力し合いながら事を行えば良かった。今は全部自分で決めることができるけれど、まわりに相談する人がいません。同じ境遇の人がいてくれたらうれしいです」。 |
農業を通じて、もっともっと人との関わりを持てたら…。
| 最後に小宮氏の将来の夢についてたずねると、意外な答えが返ってきた。「実は、共同体の回復を掲げて農業を始めたのです。人と人との関わりをもっと身近に実感できるようにしたいのです。今は休みになると、子供が合鴨を見に来たり、家で引きこもっていた子供が手伝いに来てくれます。農業を通じて、もっともっと人との関わりを持てたらいいですね」。 | ![]() 福岡の地域プロデューサー、株式会社クロスエイジの 藤野直人氏と一緒に |
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