2009/10/16(Fri) 17:35
八代目儀兵衛 橋本 隆志氏(京都府)
継承とは不変であることではなく
時代に合わせて革新を連続させていくことである。
京都に江戸・寛政時代から八代続く米屋の老舗がある。年にして250年を越える。しかし、この米屋が打ち出しているものは伝統というイメージよりもむしろ斬新で革新的だ。
米文化の国でありながら、近年その米離れが著しい国ニッポン。これを打破しようと新しい挑戦をし続ける京都のプロデューサー、八代目義兵衛 橋本隆志氏にインタビューを試みた。

「日本人が失いかけているお米本来の価値、これを我々が伝えていきたいと思った。」
-プロデューサーとしてどんな思いで取り組んできましたか?
「このまま日本の稲作は崩壊する。私はこんな風に危機感を持っています。人間の味覚は8歳までの食生活によって左右されるといわれていますが、近年食の欧米化が進み、おいしいお米を食べる機会が減ってきています。残念ながら、お米の本当のおいしさを知っている人がかなり減ってきてしまいました。
一方で生産地も昨今の温暖化の影響によりその環境は以前と随分変わってきています。このままでは安くてまずい海外のお米が大量に輸入されて蔓延する日もそう遠くはありません。日本のお米は本当にすばらしい価値を持っています。私は米屋の立場として、とにかくこの価値を伝えることにこだわって行きたいと思っています。」
「京都という市場を越えて全国に発信するために、インターネットを選んだ。」
-八代目義兵衛はWEBサイトが非常に印象的です。なぜこれに力を入れているのですか?
「もともと家業はいわゆる地域の米卸、小売りでした。私自身は八代目として米屋を継いだわけですが、京都は外から見るとなんだか華やかに見えますが、実は市場としては、山に囲まれていて、閉鎖的で、限られているんですよね。それでなんとか京都を越えて我々の商品を広げていけないかと、かなり早い時期にインターネットを手掛けました。
ただ、当然普通のやり方では埋もれてしまう。どんなに良いものを扱っていても体験してもらわなければ意味がない。とにかく認知してもらう、気を惹くためのフックがいる。ですから、10年前からあらゆるアイデアを絞りながら、様々な工夫を凝らし、WEBサイトと商品開発に力を入れてきました。」
「産地ではなく、我々が“おいしさ”を約束する。それが我々の存在意義。」
-あまり産地を全面に販売しておりませんが、これは何か理由があるんですか?
「お客様に本当に“おいしい”お米を味わってもらおうと思ったら、実は単純に産地という基準、産地での格付けだけではダメなんです。産地といっても、お米は気候や環境の影響で、年によってかなり味にバラツキがありますから。
でも実情は産地を基準にすることが一般化している。だから我々米屋としては、本当に“おいしいもの”をお届けするために、お米のプロとしてその年その年で、全国から最もおいしいお米を目利きして、時にはいくつかの産地のものをブレンドして、八代目義兵衛が選んだお米として、“おいしい”を約束してお客様に提供しています。それができなければ米屋としての存在意義がないですよ。」
「お米を食べるだけでなく、新しいシーンで楽しんでもらいたい。」
-お米を縁起物として様々な商品に展開していますが、これはどんな思いなんですか?
「先にもお話ししましたが、食生活の欧米化によって、おいしいお米を食べる機会は本当に減っています。もちろんそのおいしさをもう一度知ってもらうことは大切ですが、加えて、そもそもお米を体験するシーンを増やしていかなければ機会が増えていかないのも事実です。縁起物としてお祝い事や引き出物としてもお米を楽しんでもらうシーンを創り出すことによって、まずは楽しんでもらうことからファンを増やして、結果的にお米の新しい価値を伝えていくことができればと思っています。」

「おいしいお米をコースのメインとした新しいスタイルの米屋を創る、こんなことに挑戦してみました。」
-この10月4日に新たに米料亭をオープンされました。これにはどんな思いがあるんですか?
「一番の目的はやはりお客様においしいお米を味わってもらうことなんです。もちろんそれは素材としての米だけじゃなく、水にも、釜にもこだわって、最高のご飯を味わってもらう。本当のお米のおいしさを知らない人たち一人でも多くに味わってもらいたい、そんな思いで米料亭をオープンさせました。
ただ、今回オープンしたのは飲食店ではなく、あくまで米屋だと思っています。言わば将来の米屋。米・水・釜にこだわって炊いたご飯がメインで、これをおいしく食べるために、これに辿り着くまでに、そのために他のコース料理が存在する。そういう考え方です。だからあくまで米屋なんです。」
「米料亭 八代目儀兵衛」オープン!
「見ている先は世界。日本が誇る米文化の魅力を世界に向けて発信していきたい。」
-今後はどんな風に展開していこうと思ってるんですか?
「今後はやはり世界に向けて日本の文化を発信していきたいと思っています。
例えば、この米料亭は多くの人にお米のおいしさと楽しさを知ってもらうための基幹店として、外国人の観光客も多い八坂神社前に出店いたしました。これはやっぱり世界に向けた発信をかなり意識しているんです。
私は、日本の素晴らしいお米文化を新しいスタイルを提唱しながら世界に向けて発信していきたいと思っています。10年以内には、海外にも新しい米屋を展開していきたいですね。」
インタビューを終えて・・・
将来に向けた確かなビジョンがある。
だからこそ、今取り組んでいることに一貫性があり、一歩先のプロデュースを手掛けられる。
そんな風に感じた。
とにかく行動力があり、熱のある人である。
橋本氏が仕掛ける今後の様々なプロデュースに期待して、注目して見ていきたいと思う。
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